この記事でわかること
- AM・FM・ワイドFM・コミュニティFMという「電波放送」4種の違いと受信の仕組み
- radiko・らじる★らじるという「インターネット配信」2種の違いと使い方
- 推し活・学習・防災という目的別に最適な聴取手段
- 2025年のワイドFM周波数拡張、NHKラジオ第2廃止など最新の制度変更
ラジオは「何を聴きたいか」より「どう聴きたいか」で選ぶと失敗しない。聴取手段は目的によって最適解が異なる。推し活や日常のエンタメ用途にはradikoが向き、語学やニュース学習にはらじる★らじるが適する。災害時の速報性を重視する場合は、電池で動くワイドFM対応ラジオが有利である。地域の避難所情報を得たい場合は、コミュニティFMが最も詳細な情報源となる。電波放送とインターネット配信は遅延とエリアの特性が根本的に異なるため、この違いを理解したうえで使い分けることが重要である。
ラジオ聴取手段の早見表
| 項目 | AM放送 | FM放送・ワイドFM | コミュニティFM | radiko | らじる★らじる |
|---|---|---|---|---|---|
| 運営 | 民放・NHK | 民放AM/FM局・NHK | 地域FM事業者 | 民放ラジオ局 | NHK |
| 伝送路 | 電波(526.5〜1606.5kHz) | 電波(FM放送用周波数帯:76.0〜99.0MHz内で個別割当) | 電波(76.1〜94.9MHz) | インターネット | インターネット |
| 遅延 | ほぼ0秒 | ほぼ0秒 | ほぼ0秒(電波受信時) | 数秒〜数分 | 数十秒程度 |
| 受信エリア | 広域(夜間は数百km以上) | 都道府県単位が中心 | 市区町村単位 | 都道府県単位(有料プランで全国) | 全国(無料) |
| 遡って聴く機能 | 非対応 | 非対応 | 一部対応 | タイムフリー(過去7日以内・24時間/3時間の聴取制限あり) | 聴き逃し配信 |
つまり、遅延なく速報性を確保したい場合は電波(ワイドFM・AM・コミュニティFM)、過去の番組を聴き直したい場合はradikoからじる★らじるのインターネット配信を選ぶことになる。
AM・FM・ワイドFM・コミュニティFMは何が違うのか
電波放送は「AM放送」「FM放送」「ワイドFM(FM補完放送)」「コミュニティFM」の4方式に分かれる。いずれも総務省の周波数割り当てに基づいて運用されており、方式ごとに到達距離と音質のバランスが異なる。
AM放送とは?遠くまで届く中波を使った放送方式
AM放送は振幅変調(Amplitude Modulation)を用いる放送方式である。総務省の資料によると、AM放送には526.5〜1606.5kHzの周波数帯が割り当てられている。
電波が地表や電離層に沿って伝わりやすく、FM放送より回折しやすい性質を持つ。ただし、地形や送信所との位置関係によっては、山間部でも受信が難しい場合がある。夜間は電離層反射により数百km以上先まで届くことがあり、遠距離局同士の混信の原因になることもある。一方で、LED照明や家電製品が発するノイズの影響を受けやすく、都市部では雑音が入りやすい。
NHKを除く民放AMラジオ局47局のうち44局が、2028年秋を目処にFM局へ転換する方針を掲げている。転換の背景には、AM送信設備の老朽化とその維持コストの負担がある。
FM放送とは?高音質な超短波を使った放送方式
FM放送は周波数変調(Frequency Modulation)を用いる放送方式である。従来のFM放送用周波数は76.0〜90.0MHzであった。雑音の影響を受けにくく、ステレオでの高音質再生に適しているため、音楽番組との相性がよい。電波の直進性が強い分、AM放送に比べると到達エリアは狭くなる。
ワイドFMとは?AM番組をFM波で聴ける仕組み

ワイドFM(FM補完放送)は、AM放送の番組を、FM放送用周波数帯の中で局ごとに個別に割り当てられた周波数を使って送信する仕組みである。FM放送に使用できる周波数の範囲は、総務省による2025年5月19日付の制度改正により、従来の76.0〜95.0MHzから76.0〜99.0MHzへ拡張された。拡張された95.0〜99.0MHzの部分は、AM局のFM転換などに利用される。なお、コミュニティFM(76.1〜94.9MHz)もこのFM放送用周波数帯の一部を使用するため、90MHz以上の周波数がすべてワイドFM局とは限らない。制度改正の詳細はAM特例措置とFM周波数拡充の制度改正まとめで解説している。
ワイドFMの最大の利点は、AM放送と異なりビルや地下でも受信しやすく、かつ遅延がほぼ0秒である点にある。放送局から送信された電波を直接受信するため、インターネット配信のような配信サーバーや端末バッファによる遅延が生じない。緊急地震速報や野球中継のようにリアルタイム性が求められる場面に向いている。
一部の古いラジオや90.0MHzまでしか対応していない機種では、90.0MHz以上に割り当てられるワイドFM局を受信できない場合がある。購入前には対応周波数の上限を確認する必要がある。
コミュニティFMとは?市区町村単位の地域密着放送
コミュニティFMは、市区町村単位の狭いエリアを対象としたFM放送局である。周波数帯は76.1〜94.9MHzの範囲内で個別に割り当てられる。平常時は地域のイベント情報や音楽を中心に編成されるが、災害時には給水所の場所や避難所の開設状況など、広域メディアが扱わない詳細な生活情報を発信する。地元の電波だけでなく、「ListenRadio」「JCBAサイマル」「FM++(エフエムプラプラ)」といった専用アプリを通じて全国から聴ける局も多い。詳細は後日掲載予定の防災記事でまとめる。
radikoとらじる★らじるは何が違うのか
インターネット配信は、アンテナなしでスマートフォンやPCから聴取できる方式である。番組の遡り再生に対応している点が電波放送との大きな違いである。
radikoとは?民放ラジオのネット配信サービス
radikoは、民放ラジオ局を中心とした国内最大級のラジオ配信プラットフォームである。無料の「タイムフリー」機能では、過去7日以内に放送された対象番組を聴き直せる。ただし、番組の再生開始から24時間以内・合計3時間までという聴取制限があり、一部の番組は対象外である。有料の「タイムフリー30」プランに加入するとこの制限がなくなり、過去30日以内まで聴取できる。さらに「プレミアム」プランに加入すると、居住エリア外の放送局も聴ける「エリアフリー」機能が利用できる。
らじる★らじるとは?NHKの公式ラジオ配信サービス
らじる★らじるは、NHKが運営する公式ラジオ配信サービスである。配信内容はNHK AM・NHK FMの番組が中心となる。なお、NHKラジオ第2は2026年3月29日深夜に放送を終了し、翌3月30日から「NHK AM」「NHK FM」の2波体制へ再編された。同時に、配信サービス名も「NHK ONE らじる★らじる」へ変更されている(サービス内容・愛称「らじる★らじる」は変わらない)。語学・教育番組は、NHK AM・NHK FMやインターネット配信を含む新しい編成へ再配置されている。詳細はNHKラジオ第2廃止関連記事(後日掲載予定)で解説している。
らじる★らじるは無料で利用でき、「聴き逃し配信」機能により語学講座の復習などに活用できる。
目的別に最適な聴取手段を選ぶ
推し活・日常のエンタメ用途にはradikoが向く
深夜番組を通勤中に聴き直したい場合や、雑音のない音質で聴きたい場合は、radikoのタイムフリー機能が適している。エリアフリープランを使えば、地方局に出演するタレントの番組も居住地を問わず聴取できる。
語学・ニュース学習にはらじる★らじるが向く
語学講座や国会中継、大相撲中継などをCMなしで聴きたい場合は、らじる★らじるが適している。聴き逃し配信により、学習の復習にも活用しやすい。
防災・速報重視にはワイドFMとコミュニティFMが向く
災害発生時はインターネット回線が混雑・遮断される可能性があり、radikoやらじる★らじるは数十秒から数分の遅延が生じるため、緊急地震速報への即応には向かない。FM放送用周波数帯の上限である99MHz付近まで受信できる乾電池式ラジオを備えておけば、従来のFM局に加え、ワイドFMや今後のFM転換局にも対応しやすい。停電時でも乾電池で受信できるラジオは、防災用品として有効である。
災害時の情報源は、優先順位ではなく役割分担で捉えるとよい。NHKや広域民放局は災害全体・気象・行政情報を担い、コミュニティFMは地域の放送局が災害放送を実施しており電波を受信できる場合に避難所・給水所・地域交通などの詳細な地域情報を担う。インターネット配信は、回線が利用できる場合の補完手段として位置づけられる。防災用ラジオの具体的な選び方は防災用ポケットラジオの選び方(後日掲載予定)で解説している。転換対象局の詳細はワイドFM・AM休止局一覧を参照されたい。
よくある質問
AM放送はいつまで聴けますか?
民放AMラジオ局47局のうち44局が、2028年秋を目処にFM局への転換を目指している。全局が同時に停波するわけではなく、事業者ごとに移行時期が異なる。
古いラジオでもワイドFMは聴けますか?
受信上限が90.0MHzの一部の古いラジオでは、90.0MHz以上に割り当てられるワイドFM局を受信できない場合がある。購入前に対応周波数の上限を確認する必要がある。
radikoとらじる★らじるは両方使う必要がありますか?
両者は配信対象の放送局が異なるため、目的に応じた併用が有効である。民放番組にはradiko、NHK番組にはらじる★らじるを使い分けるのが基本となる。
FM放送とワイドFMは同じものですか?
電波方式としては同じFM放送用周波数帯を使用する。違いは番組内容にあり、ワイドFMはAM放送局の番組をFM放送用の周波数の中で個別に割り当てられた周波数で送信している。
ワイドFM対応ラジオならFM局も聴けますか?
聴ける。ワイドFM対応ラジオは、通常のFM局とワイドFM局の両方を受信できる。ただし製品によって受信可能な上限周波数が異なるため、購入時はFM帯が99MHz付近まで対応しているか確認したい。
技術者メモ
ワイドFMの周波数拡張(76.0〜99.0MHz)は2025年5月19日付で実施されている。2026年8月時点で市販されているラジオ受信機の多くはこの拡張済み周波数に対応しているが、在庫として流通している旧モデルには非対応品も残っている可能性がある。購入時は製品仕様の受信周波数上限を必ず確認したい。
放送設備の観点では、AM送信所は大電力送信機と広大なアンテナ敷地を必要とするのに対し、ワイドFM送信所は既存の送信所用地・鉄塔・局舎・電源設備などを活用できる場合がある。送信機やアンテナそのものを共用できるとは限らないが、これらの周辺設備の活用により維持コストを低減できる点も、AM局のFM転換が進む背景の一つである。
まとめ
- エンタメ用途にはradikoのタイムフリー・エリアフリーが向く
- 学習・NHK番組にはらじる★らじるが向く
- 防災・速報には、AM・FM両方を受信できFM帯が99MHz付近まで対応した乾電池式ラジオが有力
- コミュニティFMは、受信でき災害放送を実施している場合に地域の詳細情報源となる
迷ったときは、次の基準で選べばよい。
- 普段使い → radiko
- NHK番組 → らじる★らじる
- 防災 → AM・FM両対応でFM帯99MHz付近まで受信できるラジオ
- 地域情報 → コミュニティFM(受信できる場合)
関連する解説はラジオ受信改善ガイド、radikoの詳細はradikoとは・radikoの通信量・radikoプラン比較も参照されたい。
出典
- 総務省「AM局の運用休止に係る特例措置」https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/housou_suishin/am_station.html
- 総務省「ワイドFM」https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/housou_suishin/fm-seibi.html
- radiko公式サイト https://radiko.jp/
- NHKらじる★らじる公式サイト https://www.nhk.or.jp/radio/
