【解説】基幹放送用周波数使用計画の一部変更案の公表

【解説】総務省が「基幹放送用周波数使用計画」の一部変更案を公表 ― FM補完中継局の周波数拡充とAM局特例措置はどう変わるのか

目次

この記事でわかること

2026年7月14日、総務省は「基幹放送用周波数使用計画」の一部を変更する告示案等について、意見募集(パブリックコメント)を開始しました。受付期間は2026年7月14日から8月17日までです。

内容はやや専門的ですが、AMラジオの将来やFM補完中継局(俗に言う「AMのFM化」)に関心がある方にとっては見逃せない制度変更です。本記事では、告示案の概要資料をもとに、ポイントを整理してお伝えします。

そもそも「基幹放送用周波数使用計画」とは

これは電波法にもとづき総務省が定める、テレビ・ラジオなど基幹放送に使える周波数の割り当てルールです。FM補完中継局(AM局の電波が届きにくい地域を補うために設置されるFM中継局)がどの周波数帯を使えるかも、この計画の中で規定されています。

変更のポイント①:FM補完中継局「放送確保対策」の周波数拡充

FM補完中継局には開設目的別に4種類があります。

  • 災害対策
  • 都市型難聴対策
  • 外国波混信対策・地理的地形的難聴対策
  • 放送確保対策(AM局の休止・廃止時に放送区域をカバーする目的)

このうち④の放送確保対策について、使用可能な周波数帯を90.1〜98.9MHzに拡充する案が示されました。あわせて、90.1〜98.9MHz帯が選定できず「真に必要なとき」に限り、76.1〜90.0MHz帯(通常はワイドFM帯として認識される範囲より下側)も使えるようにする例外規定が新設されます。

総務省は「真に必要なとき」に該当する具体例を通達で明確化する方針も示しており、概要資料では次のようなケースが挙げられています。

  • すでに76.1〜90.0MHz帯を使用しているFM補完中継局で、AM中継局をやむを得ず廃止するとき
  • 特定地上基幹放送事業者等の責めに帰することができない事由で、AM中継局をやむを得ず廃止するとき
  • ④放送確保対策を目的として申請するFM補完中継局に、90.1〜98.9MHz帯を割り当てられないとき
  • 上記に該当する既存のFM補完中継局と同一周波数で同期放送を行うとき

変更のポイント②:FM「放送波中継+同期放送」の制度化

もう一つの柱が、FM放送における新しい中継方式の制度化です。

現在、親局から中継局への伝送方式には主に次のパターンがあります。

  • 放送波中継(親局の電波をそのまま中継局が拾って再送信)
  • 同期放送(親局・中継局が同一周波数で電波を出す方式)

今回、この2つを組み合わせた「放送波中継+同期放送」という方式を制度上位置づける案が示されました。中国総合通信局が令和6〜7年度に行った技術試験でこの方式の実用化にめどが立ったことが背景にあります。この方式が使えるようになると、放送事業用の伝送路(STL/TTL)を1系統に集約しつつ、電波の周波数も1波に抑えられるため、事業者にとっては設備コストや周波数の有効利用の面でメリットが生まれます。

変更のポイント③:AM局休止・廃止に関する特例措置の延長と簡素化

AM局の運用休止・廃止に関しては、視聴(聴取)継続のためのガイドラインと特例措置の基本方針も改定されます。ポイントは、延長期間を2段階に分け、それぞれで要件レベルを変える点です。

  • 2027年1月31日までの延長:住民への周知広報は同等の水準を要件としつつ、ラジオ放送での周知は求めず、周知開始のタイミングも「休止3か月前」から「速やかに」へと緩和
  • 2028年10月31日までのさらなる延長:周知広報の要件を全体的に簡素化する一方、休止期間の延長や廃止についての周知は引き続き必要
  • どちらの期間でも、問い合わせ窓口の設置や実施体制の確保といった要件は維持
  • 特例適用局の選定妥当性の検証や、運用休止の影響検証・報告書作成・結果公表といった要件は、両期間とも不要とする方向

概要資料には、radikoなどのインターネット配信サービスによる検証結果を踏まえて制度整備を検討する旨の記載もあり、AM局の休止・廃止に伴う影響の測り方そのものを見直す狙いがうかがえます。

リスナー・視聴者にとっての意味

今回の変更は、直接的には放送事業者向けの制度整備ですが、リスナー目線では次のような点に関わってきます。

  • AM局のFM転換・AM局廃止の動きが、今後さらに進めやすくなる制度環境が整う
  • FM補完中継局が使える周波数の選択肢が広がることで、地域によっては新たな周波数でのFM放送が増える可能性がある
  • AM放送終了までの周知期間や対応が簡素化される分、地域によっては「気づいたら休止していた」というケースが増えることも考えられる

お住まいの地域のAM局がFM転換や廃止を検討している場合は、今後の総務省発表や放送局からのお知らせを確認しておくとよいでしょう。

意見募集の詳細

  • 案件名:基幹放送用周波数使用計画の一部を変更する告示案等
  • 受付期間:2026年7月14日(火)〜2026年8月17日(月)
  • 提出方法:e-Gov(電子政府の総合窓口)のパブリックコメント欄から提出可能
  • 所管:総務省情報流通行政局 放送技術課/放送業務課

具体的な告示案・概要資料はe-Govおよび総務省ウェブサイトの「報道資料」欄で公開されています。制度の詳細を確認したい方は、公開されている概要資料PDFを参照することをおすすめします。

まとめ

今回の告示案は、①FM補完中継局の周波数拡充、②FM中継方式の新方式の制度化、③AM局特例措置の延長・簡素化という3つの柱からなる、ラジオ放送インフラの実務に直結する制度変更です。AMラジオのFM移行が進む中、今後も総務省の関連発表には注目していく必要があります。


出典:総務省報道資料「基幹放送用周波数使用計画の一部を変更する告示案等に関する意見募集」(2026年7月14日公表)

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この記事を書いた人

4ktv管理人|通信・映像技術エンジニア
東京在住。映像・通信インフラの現場で30年以上技術を磨いてきた現役シニアエンジニアです。
放送とネット配信の融合が進み、視聴環境は便利になった一方で仕組みは年々複雑になっています。長年の知見を、次世代や一般の視聴者にわかりやすく伝えたいという思いから本サイトを立ち上げました。
第一級陸上無線技術士・電気通信主任技術者などの国家資格に裏打ちされた正確な情報をベースに、ラジオの感度向上から最新の4K配信、周辺機器選びまで、技術的根拠を持って解説します。

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