4K地上波放送(地上放送高度化)の実現に向けた最新のロードマップを、技術的エビデンスを交えて大胆な予測をします。
予測:規格は決定し準備開始の段階、2028年試験・2032年本格放送開始?
4K地上波放送の実現には、**「限られた周波数帯域(6MHz)で、BS4Kの約2倍の効率でデータを送る」**という物理的限界への挑戦が必要です。
この実現には、最新の圧縮規格である**VVC(H.266)と、それを処理する次世代SoC(半導体)**の普及が不可欠であり、技術開発・実証・市場浸透の3ステップを経て、2030年代の完全移行を目指す設計となっていると思われます。
詳細ロードマップと技術的エビデンス
2026年:技術標準の確定と制度設計
「放送方式のルール」を法的に完成させるフェーズです。
- 技術的エビデンス(Advanced ISDB-T)
- 総務省とARIB(電波産業会)が進めている「地上放送高度化方式」の技術仕様が制定されています。
- NHK技研だより 2025年 4月号 TOP NEWS 地上放送高度化方式を標準規格化
- ARIB(電波産業会)
STD-B80 ISDB-T3による高度地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式 1.0 2025.03.25
STD-B79
ISDB-T2及びISDB-T1.5による高度地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式 1.0 2025.03.25 - IP伝送の導入: 現行のMPEG-2 TS方式から、ネット親和性の高い「TLV/IP伝送方式」へ移行します。これにより、放送波でネットプロトコルを流すことが可能になります。
- 参照リンク: 総務省:放送高度化に関する検討会 報告書
- 地上デジタル放送方式高度化作業班報告 概要
2028年頃:都市部での先行放送(試験放送)
「次世代SoC」を搭載したテレビが市場に登場し、実証を行うフェーズです。
- SoC開発の技術的ハードル(VVCの採用)
- 4K地上波では、BS4Kで使用されているHEVCよりも50%圧縮効率が高い**VVC (H.266)**を採用します。
- 計算負荷の問題: VVCのデコード処理はHEVCの数倍の演算能力を必要とします。2026年頃からMediaTek?等のどこかのチップメーカーがハイエンドSoCのサンプル出荷を開始し、2028年以降にようやく「普及価格帯のテレビ」に搭載可能な低消費電力SoCが量産体制に入ると推定します。
- LDM(階層分割多重)の実装
- 一つの周波数帯の中で、既存の2K放送と新しい4K放送を重ねて送るLDM技術の運用検証が都市部で開始されます。
- 参照リンク: NHK技研:地上デジタル放送の高度化技術
2030年代:全国的な本放送への移行
「インフラ更新」と「テレビの買い替え」が完了し、社会に浸透するフェーズです。
- 受信機の普及サイクル
- 日本のテレビ買い替え周期は約9〜10年(内閣府 消費動向調査)です。2020年代後半からVVC対応SoCが標準搭載されれば、2030年代半ばには世帯の過半数が「追加機材なしで4K地上波を見られる状態」になります。
- 周波数リファーミング(再編)
- 全国数千局の中継局設備を4K対応へ順次更新し、既存の周波数を整理(リパック)しながら4K放送を全国に届けます。
- 参照リンク: ARIB:地上放送高度化方式 標準規格案
- 総務省 基幹放送用周波数使用計画
技術比較:現行 vs 次世代
| 項目 | 現行地デジ (2K) | 次世代地上波 (4K) | 理由・エビデンス |
| 圧縮技術 | MPEG-2 | VVC (H.266) | 6MHz帯域で4K映像を送るための必須条件。 |
| 伝送効率 | 約17~24Mbps | 約35Mbps以上 | 高度な変調方式(1024QAM等)による大容量化。 |
| SoC要件 | 汎用デコーダー | VVC専用ハードウェア回路 | 高い演算負荷を処理し、消費電力を抑えるため。 |
| サービス | 放送のみ | 放送と通信の完全融合 | IPパケット伝送によりネット動画との連携が容易に。 |
まとめ
4K地上波は、**VVC対応SoCの開発(2028年ターゲット?)**と、**テレビの自然な買い替えサイクル(2030年代)**を組み合わせた、非常に現実的なタイムラインで進められるのもと思われます。とはいえ、BS4K放送の普及が必ずしも成功していないこともあり、今後どのようなスケジュールで進むのか関係者の皆さんで詳細検討している状況と思われます。筆者は早期の実現を一技術者として楽しみに待っています。
※本記事はあくまでも25年12月時点の周辺状況からの筆者の予想ですので、正式には総務省他からの最新情報をお待ちください。
某地方山頂の放送鉄塔です。どこだか分かりますか?

